コーヒーチェリーとは
コーヒーの実ってご存知ですか?コーヒーは皆さんの生活に非常に身近な存在ですが、おそらく多くの方が焦茶色の液体か焙煎された豆をイメージさせるのではないでしょうか。
私たちがよく目にする「コーヒー豆」はコーヒーチェリーと呼ばれる果実の中の種の部分を乾燥させて火にかけ、いわゆる焙煎という工程を経た「焙煎された豆」を指すことが多いのではないでしょうか。
コーヒーチェリーはその名の通り、さくらんぼのような見た目で品種や地域によって違いはあるものの多くが真っ赤に完熟し、その実は甘酸っぱくも優しい甘さが特徴です。
コーヒー生産国と知られる国々の多くはおおよそ南北緯35°内の熱帯~亜熱帯と考えられる地域で、各々の産地で収穫されたコーヒーチェリーは脱穀・水洗・発酵・乾燥など様々なプロセスを経て、コンテナ船による海上輸送または空輸で消費国へと運ばれ、各ロースターへと渡り、それぞれ独自の特徴ある焙煎が施され、一杯のカップへ注がれます。
コーヒーは取引市場の中で、常に上位の取引品目であることからも世界中の至る所で嗜好品として愉しまれています。その歴史は長く、紀元前にはもうコーヒーの実から液体としてのコーヒーを取り出すという行為は行われていたようで、産業革命以降は他の製品等と同様にしてコーヒーの商取引は活発化し大量生産、大量消費の時代に突入していきます。そのため、コーヒーの商取引で最も重要視されていたのは「質」より「量」。バルクでのやり取りが一般化されていきます。その為、生産国では品質の良し悪しは関係なく、一箇所に集荷し大量に集められたコーヒーを捌いていく流れができます。コーヒーの収穫はピッカーと呼ばれる季節労働者により手作業で行われていることが多く、「量」に重きを置いた基準により彼らはコーヒーチェリーの状態や種類など関係なく収穫量により賃金が支払われるシステムであり、低賃金であるためにその生活水準もあまり良いものではありませんでした。1990年代になると、発展途上国の支援策としてコーヒー生産の品質向上を手助けするような動きができ、そこから「量」より「質」で評価を行っていく基準ができ始めます。そうすることで、より丁寧で確実なピッキング作業の仕組みができ、給料水準も仕事の質に対する基準化の動きができます。こうした流れの中で、生産地やテロワール、生産者、いつ収穫されどこへどのように運ばれたなどのトレーサビリティーが明確化され、国際基準により80点以上と評価されたコーヒーを「スペシャルティコーヒー」と呼ぶようになります。
スペシャルティーコーヒーの誕生により、単純に苦いというイメージのコーヒーの印象はより多彩な表現方法によって言語化され、徐々に生活に浸透してきています。元々は完熟した果実の種であるコーヒー豆。スペシャルティコーヒーはよりコーヒーチェリーの存在を身近に感じさせてくれます。